「MOTHER2」よりセンスのあるゲームをあげることは難しいのではないでしょうか。あえて下げる必要はないのですが、ひとつひとつの要素は傑出するほど新しくはありません。同世代のDQ5やToPと冷静に見比べれば、そうだと言えるでしょう。
ただしかしです、映像、音楽、ゲーム性、ストーリー、それらが重なり合ったとき、本作はけっして代えのきかない“おまえのばしょ”を心の中に作ります。言葉にすることは難しいですが、いまなおオススメできるRPGとして、本作を紹介します。
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裏山に隕石が落ちてきた夜。地球の危機を伝えに来たという未来人に、主人公は世界を救う4人のうちの1人であると告げられる。
宇宙はギーグによって支配されようとしており、10年後の世界はたいへんなことになっているらしい。主人公はたびに出るが、彼をまっさつせんとするギーグの手下たちが行くてをふさぐ。
はたして主人公は、残り3人の少年少女たちを見つけ出し、ギーグの野望をとめることはできるのか……
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独創的なあらすじではありません。むしろ、当時においても古典的であったかと思います。それなのにどうして多くの人が、一にも二にもマザー2なのか。レビューとしては分解していくほかありません。
まず紹介したいのは映像面です。これは見てもらうべきなので、上の動画をぜひご覧ください。なんというか、すごく“他にない”タッチだと思います。
SFCソフトということを差し置いても、突出して美麗なグラフィックではありません。素っ気なさを感じるほどにシンプルですし、特に人物の造形はかなり単純化されています。
ただ、なにかを新鮮に感じる。それはまず、アメリカンでポップな舞台設定というのが物珍しいからかもしれません。現実世界ベース、というのでもRPG的に十分新しいのですが、さらにそれが海外ときた。中世ファンタジーに馴れたプレイヤーにとって、わくわくさせてくれる映像だったはずです。
でもそれだけではなく、どこか小気味よく親しみやすい。センスとしか言いようがない部分もありますが、映像はリアルばかりがよいわけではないことを、本作のドット絵は教えてくれます。
同様の魅力は音楽にも通じます。まさしく16ビットサウンドというやつで、ピコピコとした電子音には違いありません。けれど、心に響くあたたかさがある。
そもそも本作は、「おとのいし」というキーアイテムを手に、8つのパワースポットをめぐってメロディをつなげるという冒険を大筋としています。音楽のクオリティには定評がありますね。
加えて効果音が独特であることで有名です。攻撃音だったり扉をあける音だったり、妙にリアルなデフォルメというか、なにを言いたいのかまとまりませんが印象に残ります。
そしてゲームシステムです。これがまた複雑ではないのに面白い。前衛的な部分はないのに、行き届いた細かい作り込みが病みつきになるセンスを有しています。
例えばステータスとしては珍しいガッツ。これは高いと瀕死のダメージを受けた際、HPを1残して耐えやすくなるというシステムなのですが、これが普通のバトルをドラマチックにさせる。
HPといえばドラムロール式で、HPオーバーのダメージをうけても回復が間に合えばドラムを止められるというのも面白い。あとフィールドエンカウント式なのですが、ボスを倒すとダンジョンのモンスターたちが逃げていくようになるとか。敵と言えば犬とかタコとかすごい俗っぽいとか。
いや言い出すとキリがないです。総じて言えば、別にものすごく斬新というわけではないのに、とても行き届いている。現代でも普及してないような配慮もあったりと、ゲームバランスの練度はなお古くなっていないです。
RPGにおいて大切な、世界の広さも特筆すべきですね。いちいち町が広いし、いちいち住民のセリフが凝っている。ダンジョンも一風かわった背景設定がなされていたりと、歩いていて飽きさせません。
やりこみ要素こそ少ない一本道ですし、必要プレイ時間は少ないはずなんですが、なぜかボリューミーなんですね。こだわられている世界は、ギミックをつめこまなくても満足できるものになるということなのでしょう。
最後にストーリーです。ここまで述べてきた、すごく革新的なわけではないのに妙に味があるという要素が、すべて重ね合わさってシナリオが成立しています。
物語の起点が“選ばれし勇者”式というのは、実際のところ陳腐です。しゃべらない主人公は没個性的(だからこそルミネホール)ではありますし、他の登場人物も詳細な背景設定を持っているわけではありません。
悪役ギーグがどういう世界観で宇宙を支配しようとしているのか(少なくとも「MOTHER2」内に限れば)わかりませんし、上述した音をつなげるというくだりも、なぜしなければならないかも特に語られません。
でもいいんですね。世界を語ることを放棄していて、ならば捨象として描くという斜に構えた感じでもないのに、しっかりと伝わってくる。
善や悪をもった人の心の難しさバカバカしさや、そのどうしようもなさの中に輝く人と人のつながりだったり、温かさですね。マジカントの描写や、ラストバトルの展開など、ぜひ体験してほしい。(マジカントの世界にはポーキーもゲップーもいるんですよ……)
以上のようなところです。言葉で語るのは難しい作品ですが、少しでも興味がわく文章になっていたら幸いです。本作はながらく再プレイが難しい状況でしたが(SFC以外は普及したハードとは言い難い)、ついにSWITCHでの配信が実現しています。
わたしもこの機会に「MOTHER」を手に取ってみたいと思っています。おとなもこどももおねーさんも、ぜひにオススメです。それでは末尾はこの言葉、PKサヨナラ!です。
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ただしかしです、映像、音楽、ゲーム性、ストーリー、それらが重なり合ったとき、本作はけっして代えのきかない“おまえのばしょ”を心の中に作ります。言葉にすることは難しいですが、いまなおオススメできるRPGとして、本作を紹介します。
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裏山に隕石が落ちてきた夜。地球の危機を伝えに来たという未来人に、主人公は世界を救う4人のうちの1人であると告げられる。
宇宙はギーグによって支配されようとしており、10年後の世界はたいへんなことになっているらしい。主人公はたびに出るが、彼をまっさつせんとするギーグの手下たちが行くてをふさぐ。
はたして主人公は、残り3人の少年少女たちを見つけ出し、ギーグの野望をとめることはできるのか……
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独創的なあらすじではありません。むしろ、当時においても古典的であったかと思います。それなのにどうして多くの人が、一にも二にもマザー2なのか。レビューとしては分解していくほかありません。
まず紹介したいのは映像面です。これは見てもらうべきなので、上の動画をぜひご覧ください。なんというか、すごく“他にない”タッチだと思います。
SFCソフトということを差し置いても、突出して美麗なグラフィックではありません。素っ気なさを感じるほどにシンプルですし、特に人物の造形はかなり単純化されています。
ただ、なにかを新鮮に感じる。それはまず、アメリカンでポップな舞台設定というのが物珍しいからかもしれません。現実世界ベース、というのでもRPG的に十分新しいのですが、さらにそれが海外ときた。中世ファンタジーに馴れたプレイヤーにとって、わくわくさせてくれる映像だったはずです。
でもそれだけではなく、どこか小気味よく親しみやすい。センスとしか言いようがない部分もありますが、映像はリアルばかりがよいわけではないことを、本作のドット絵は教えてくれます。
同様の魅力は音楽にも通じます。まさしく16ビットサウンドというやつで、ピコピコとした電子音には違いありません。けれど、心に響くあたたかさがある。
そもそも本作は、「おとのいし」というキーアイテムを手に、8つのパワースポットをめぐってメロディをつなげるという冒険を大筋としています。音楽のクオリティには定評がありますね。
加えて効果音が独特であることで有名です。攻撃音だったり扉をあける音だったり、妙にリアルなデフォルメというか、なにを言いたいのかまとまりませんが印象に残ります。
そしてゲームシステムです。これがまた複雑ではないのに面白い。前衛的な部分はないのに、行き届いた細かい作り込みが病みつきになるセンスを有しています。
例えばステータスとしては珍しいガッツ。これは高いと瀕死のダメージを受けた際、HPを1残して耐えやすくなるというシステムなのですが、これが普通のバトルをドラマチックにさせる。
HPといえばドラムロール式で、HPオーバーのダメージをうけても回復が間に合えばドラムを止められるというのも面白い。あとフィールドエンカウント式なのですが、ボスを倒すとダンジョンのモンスターたちが逃げていくようになるとか。敵と言えば犬とかタコとかすごい俗っぽいとか。
いや言い出すとキリがないです。総じて言えば、別にものすごく斬新というわけではないのに、とても行き届いている。現代でも普及してないような配慮もあったりと、ゲームバランスの練度はなお古くなっていないです。
RPGにおいて大切な、世界の広さも特筆すべきですね。いちいち町が広いし、いちいち住民のセリフが凝っている。ダンジョンも一風かわった背景設定がなされていたりと、歩いていて飽きさせません。
やりこみ要素こそ少ない一本道ですし、必要プレイ時間は少ないはずなんですが、なぜかボリューミーなんですね。こだわられている世界は、ギミックをつめこまなくても満足できるものになるということなのでしょう。
最後にストーリーです。ここまで述べてきた、すごく革新的なわけではないのに妙に味があるという要素が、すべて重ね合わさってシナリオが成立しています。
物語の起点が“選ばれし勇者”式というのは、実際のところ陳腐です。しゃべらない主人公は没個性的(だからこそルミネホール)ではありますし、他の登場人物も詳細な背景設定を持っているわけではありません。
悪役ギーグがどういう世界観で宇宙を支配しようとしているのか(少なくとも「MOTHER2」内に限れば)わかりませんし、上述した音をつなげるというくだりも、なぜしなければならないかも特に語られません。
でもいいんですね。世界を語ることを放棄していて、ならば捨象として描くという斜に構えた感じでもないのに、しっかりと伝わってくる。
善や悪をもった人の心の難しさバカバカしさや、そのどうしようもなさの中に輝く人と人のつながりだったり、温かさですね。マジカントの描写や、ラストバトルの展開など、ぜひ体験してほしい。(マジカントの世界にはポーキーもゲップーもいるんですよ……)
以上のようなところです。言葉で語るのは難しい作品ですが、少しでも興味がわく文章になっていたら幸いです。本作はながらく再プレイが難しい状況でしたが(SFC以外は普及したハードとは言い難い)、ついにSWITCHでの配信が実現しています。
わたしもこの機会に「MOTHER」を手に取ってみたいと思っています。おとなもこどももおねーさんも、ぜひにオススメです。それでは末尾はこの言葉、PKサヨナラ!です。
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