本作を楽しむには、変なものを変というだけで面白いと思える、素直な感性が必要かもしれません。なにか意義とか気づきとか、日常の中にも普遍を見出したい人には向かないやもです。
物語はある一家の日々を描きます。3姉妹に弟、父母という構成です。語り手は三女で、19歳の無職ちゃん。みな普通なようでいてちょっと、ある部分においてはかなり平均からズレています。
いわゆる家族の日常を描いた作品で、特にこれだという筋はありません。それぞれに少し変わった理由・立ち位置で人間関係にトラブルを抱えていたり、社会との折り合いがうまくいかなかったりしますが、展開の軸になるわけでもない。
それは確かに自然ではあって、家族と言っても人生は別々の経緯を辿っています。しかれど家に集えば時間は重なるというわけで、溶け合わないのに混じっている。通時で俯瞰してみれば、不思議な多重合奏となるわけです。シンフォニーにはならないわけですが。
そういう魅力に関して、本作はとてもよくまとまっています。感性が独特ですしね。日中化粧をするのに父の帰宅に際して顔をしっかり洗う母とか、突然他人の赤ちゃんを引き取ろうとする次女とか、面白いのかもですね。
ただ別にと思う人もいるかもしれません。独特な感性というのは、ズレた感性に見えることもありますし、もっとあざとい逆張りに見えることもあります。
世間に順応できない“美少女”ならば、ルッキズムとも合致するものですが、それがやや妙齢で冴えた容姿と感じられない人物なら、不思議ちゃんを持て余す気持ちも湧いてきます。面白いではなく痛々しいと思うなら辛いでしょう。
それを補完するかのように湧く主人公のボーイフレンドも、やけに実在感がありません。ラーメンの油の臭いがしなさそうな男子大学生なんて、そいつはきっと虚構の中にいます。
以上のように、悪くはないのですがオススメはしにくい作品です。江國香織分を接種したいのなら、「きらきらひかる」のほうが短くて胃もたれしない気もします。
あと小動物を買っていて、愛着を持っている人にはことさらに注意です。残念なことに私がそうで、また無粋な真面目を抱えてもいますので、キレそうになりますよね。名前は素敵なんですが。(デュークが好きだったんですが、ふと彼もけっこう雑な飼い方されていたことに思い至ってしまった……)
記事にチップを送る
物語はある一家の日々を描きます。3姉妹に弟、父母という構成です。語り手は三女で、19歳の無職ちゃん。みな普通なようでいてちょっと、ある部分においてはかなり平均からズレています。
いわゆる家族の日常を描いた作品で、特にこれだという筋はありません。それぞれに少し変わった理由・立ち位置で人間関係にトラブルを抱えていたり、社会との折り合いがうまくいかなかったりしますが、展開の軸になるわけでもない。
それは確かに自然ではあって、家族と言っても人生は別々の経緯を辿っています。しかれど家に集えば時間は重なるというわけで、溶け合わないのに混じっている。通時で俯瞰してみれば、不思議な多重合奏となるわけです。シンフォニーにはならないわけですが。
そういう魅力に関して、本作はとてもよくまとまっています。感性が独特ですしね。日中化粧をするのに父の帰宅に際して顔をしっかり洗う母とか、突然他人の赤ちゃんを引き取ろうとする次女とか、面白いのかもですね。
ただ別にと思う人もいるかもしれません。独特な感性というのは、ズレた感性に見えることもありますし、もっとあざとい逆張りに見えることもあります。
世間に順応できない“美少女”ならば、ルッキズムとも合致するものですが、それがやや妙齢で冴えた容姿と感じられない人物なら、不思議ちゃんを持て余す気持ちも湧いてきます。面白いではなく痛々しいと思うなら辛いでしょう。
それを補完するかのように湧く主人公のボーイフレンドも、やけに実在感がありません。ラーメンの油の臭いがしなさそうな男子大学生なんて、そいつはきっと虚構の中にいます。
以上のように、悪くはないのですがオススメはしにくい作品です。江國香織分を接種したいのなら、「きらきらひかる」のほうが短くて胃もたれしない気もします。
あと小動物を買っていて、愛着を持っている人にはことさらに注意です。残念なことに私がそうで、また無粋な真面目を抱えてもいますので、キレそうになりますよね。名前は素敵なんですが。(デュークが好きだったんですが、ふと彼もけっこう雑な飼い方されていたことに思い至ってしまった……)
記事にチップを送る